気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】

「あ、これ、美織さんの作品でしょう」


渚は箱の中から手のひらサイズのグラスを取り出した。淡いピンク色が底に向かってグラデーションになっている。丸みを帯びた形は琉球ガラスの特徴でもある。
「やっぱり祖父の作品にはまだまだ及ばないですよね」


二十七歳になった美織も工芸家として第二の人生を歩んでいるが、その道五十五年、七十代の工芸家としてのキャリアがある祖父に敵うはずもない。目の肥えた渚であれば、未熟なのは一目瞭然だろう。


「そうじゃないわ。夏川さんの作品は完成しつくされていて、琉球ガラス特有のほわっとしたなかにどことなくキレがあるんだけど、美織さんのは限りなく優しい印象なのよね。あたたかみがあるというか、やわらかくてほっこりするっていうのかな。とにかく見ると穏やかな気持ちになるの。たぶん美織さんの人柄が作品に現れるのよね」


もったいない言葉が照れくさい。


「そんなふうにおっしゃっていただけて光栄です。ありがとうございます」
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