気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
「美織のご両親もガラス工芸を?」
「いえ、両親はペンションをやっていたのですが、近くで外資系のホテル開発があってから特に経営が立ち行かなくなって……。うちだけじゃなく、たくさんの民宿やペンションが潰れてしまったんです」
沖縄ではほかに仕事を見つけられず、心機一転家族で東京へ引っ越した。
オフィス街で小さなお弁当屋を経営していたが、それも父親が病に倒れるまでの話だ。
「……ホテル開発のせいで?」
心なしか彼の声のトーンが下がる。
「立ち退きを余儀なくされた知り合いはたくさんいました」
高額な立ち退き料をもらえた家はまだよかったかもしれない。しかしホテル開発の敷地に被らず、すぐ近くで営業を続けざるを得なかった民宿もたくさんあった。
そのせいで両者の間にいがみ合いも生まれ、和解できないままでいると聞く。
史哉の表情に影が差したためハッとする。
「ごめんなさい、せっかく久しぶりに会ったのに暗い話なんて聞きたくないですよね」