気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
遠距離恋愛だって乗り越えられた。
(きっと大丈夫。史哉さんは喜んでくれるから。心配いらない)
ふたりで育んできた揺るぎない愛が、美織の背中を強く押した。
軽い音を立ててエレベーターが止まる。
「よし、行こう」
自分に気合を入れ、フロアに降り立った。
(連絡もなしに来ちゃったけど、もしも不在だったらロビーで待とう)
毛足の長い絨毯の通路の最奥。このホテルにふた部屋あるという最高ランクのスイートルームが視界に入ったときだった。
目的の部屋の前に四十代くらいの男性がいることに気づく。史哉はドアを少しだけ開けて、彼と話していた。
(誰だろう……)
家族か、仕事関係の人か。チラッと見えた史哉の表情が険しい。
どことなく不穏な空気を感じたため、咄嗟に壁際に身をひそめて様子を窺う。耳を澄ませていると、ふたりのやり取りが聞こえてきた。