気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
心の中では大きく動揺しているが、それを悟られないよう平静を保った。
「ママ、だあれ?」
美織にしがみついた陽向が史哉を見上げる。
「おじいちゃんのガラス工芸を見に来たお客様よ」
〝あなたのパパよ〟なんて言えるはずもない。そう答える以外になかった。
「じゃあ、ありあとだね」
史哉に向かい、陽向が満面の笑みを向けて〝ありがとう〟を言う。
穢れのない純粋な顔を見て、罪の意識を感じずにはいられない。陽向に父親を作れなかった責任は、美織が生涯背負っていかなければならないものだ。
史哉は美織と陽向のやり取りをしばらく茫然と見ていたが、数歩後ずさりして踵を返し、なにも告げずに立ち去った。
「美織、今のはもしかして――」
「ち、違うから。お客さんだったんだけど、今日はもう閉めるからって話していたの」