ふたりは同じ日、恋におちた。
俺がこの1年で知ったのは彼女の名前。
それから、よく笑う女の子だということ。
……そんな彼女がたった今、血を流して保健室へと運ばれた。
「なぁ、奏多!やばいって」
数分前、幼なじみの利樹が慌てた様子で走ってきたかと思えば信じられないことを口にした。
「なぁ、花梨ちゃんって宮崎さんだよな?なんか血流して保健室に運ばれたらしいぞ」
「……は?」
「友達っぽい子が心配してて、地面には血が……」
利樹の言葉を最後まで聞くよりも先に、体が動き出した。
今ならベストタイムを出せるんじゃないかというほど、懸命に走ったその先には保健室と書かれたプレート。
だが、ドアの前に立った瞬間、ふと冷静になった。
よく考えてみたら俺のやってることって気持ち悪くないか。
彼女があの日のことを今でも覚えているとは限らない。
何の関係もない奴が様子を見に来るなんて“ない”だろ、普通。
でも、ここまで来て彼女の容態も確認せず戻るなんてできない。