ふたりは同じ日、恋におちた。


翌日──。


登校時には土砂降りの雨。

先週、下ろしたばかりのスニーカーには来るまでに付いたであろう汚れの跡。

だけど、こんな雨の日も彼女との出会いを思い出すから嫌いじゃない。


下駄箱は特に。


いつもどおり靴をしまい、上履きに履き替える。


そして、教室に向かおうとした時「あ、あの……!岬先輩」と背後から声をかけられた。


この声は……。 

振り向くと鞄を持ったままの宮崎さんが壁際に一人で立っている。

咄嗟に名前を呼びそうになったのを我慢した俺は、代わりに「……あ、昨日の。保健室の」なんて白々しい返事をした。

「宮崎さん」なんて呼んだら驚くよな、きっと。

昨日の感じからして、1年前のことは覚えてなさそうだし。


そう思っていたら、彼女は勢いよく話しはじめた。

「き、昨日はありがとうございました。私、2年の宮崎花梨っていいます。これお菓子とパンなんですけど、もしよかったらお礼に貰って下さい」

その言葉と共に差し出されたのは白いビニール袋。

彼女が言うには中身はお菓子とパンらしい。

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