ふたりは同じ日、恋におちた。
鼻血を出している姿よりも、鼻にティッシュを詰めてる姿を見られる方がダメージが大きい。
というのを私は今日、初めて知った。
私の心情なんてこれっぽっちも知らない岬先輩はそのまま保健室へと上がりこむ。
そして、机にあった絆創膏を一枚手に取るとこちらに視線を向けた。
その姿を盗み見ていたせいで、ばっちりと目が合ってしまう。
「先生は?」
「い……今、出ていきました」
「あー……そっか」
岬先輩との初会話だというのに心が全く躍らないのはこの見た目のせいだろう。
かといってティッシュを抜くわけにもいかず、両手で鼻と口を覆うような形で話を続ける。
「怪我……ですか?」
「まぁ、そんなとこ」
先輩はそう言うと手に持ったままだった絆創膏をズボンのポケットへとしまった。
あとは先輩が出て行くのを待つだけ。
それだけだったのに、突如鼻の奥に感じた不快感。
慌ててティッシュに手を伸ばすが箱の中は空っぽ。
そういえばさっき体操服を濡らしすぎたせいで、何枚もティッシュを使ったような……。
ど、どうしよう。