ふたりは同じ日、恋におちた。


新しいティッシュが置いてあるのは先輩が立っている隣の棚だ。



大丈夫、先輩はもうじき出ていくはず。

私はそう思いながら、背を向けることでなんとかこの時間を耐えようとした。

(先輩、お願い!早く出て行ってください)

まさか、こんなことを思う日が来ようとは……。

そんな私の切なる願いが届いたのか、背後で先輩がガサゴソと動き出す。


その数秒後、突然ビニールを破くような音が聞こえてきた。

あ、あれ?まだいるの。

次にペリペリと何かを剥がすような音がして、最後に先輩が歩いてくる足音。

それはどんどんと近づいてきて、私のすぐ後ろでピタリと止まった。


そして、「ん」という声と共に新しいボックスティッシュが私の真横にあるテーブルへと置かれる。

それも取り出しやすいように、一枚目が引っ張り出された状態で。


もしかして、私がティッシュを取りたかったことに気づいてくれたの……?



「あ、ありがとうございます」

勢いよく取り出したテッシュでひとまず鼻を押さえる。

先輩のおかげで本日、二度目の水玉模様を作らずにすんだ。


「……他に何か必要なものある?」


「だ、大丈夫です!」


「……じゃあ、お大事に」

「ありがとうございます。せ、先輩もお大事にしてください」

「……ん?ああ、うん。ありがとう」

先輩はそう言うと保健室から出て行った。

緊張状態から開放された私は、その場で崩れるようにしてしゃがみ込む。



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