ふたりは同じ日、恋におちた。


「宮崎さん、少しだけ待っててね。手前のベッドが空いたから」

「はい。あの、さっきの先輩って……」

「ああ、岬くん?」

佐野先生の口から出たのは意外な名前だった。
 

なぜそう思ったのかというと、入学してから何度も耳にしたその名前はいつも悪い噂とセットだったから。

有名なのだと、告白してきた女の子をこっぴどく振ったとか、手紙を読まずに捨てて泣かせたとか。


だけど、そんな噂が立つような人には見えなかったな。


「岬くん、心配してたわよ」

「えっ?」

「出て行く時にあなたの顔色が悪いから、早くベッドを貸してあげてって」

「そう……なんですか」


だから一瞬、私の方を見たの……?


もしかして、岬先輩は私にベッドを譲ってくれたのだろうか。

こんな見ず知らずの相手に。

いや、それは考えすぎ?

でも、もしそうなら……。

「お礼、言えなかったな」

「ん?宮崎さん、何か言った?」

「い、いえ。何でもありません」


その出来事があってから、私は岬先輩を目で追うようになり、
いつしか目を奪われるようになっていた。


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