ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ
そう思っているのに――。


「…あっ!ちょっと待ってや!」


さっきぶつかった男の子が、なぜかわたしを追いかけてきた。


ちゃんと謝ったのに、…なんで!?


野球部、こわいっ。

関西弁、こわいっ。


わたしは、青信号が点滅している横断歩道を走って渡り、なんとか振り切ったのだっ。



「ただいま〜…」

「莉子、おかえり。どうだった?」

「なんか…疲れたっ」


わたしはそれだけ言うと、まだ荷物もなにもない自分の部屋へと入った。


しかし、そのあとすぐに気がついた。

…ワイヤレスイヤホンのケースがないことに。


確か、パーカーのポケットの中に入れておいたのに、手を突っ込んだけどなにもなかった。


あれがないと、イヤホンが充電できない。


おそらく、どこかで落としてしまったようだ。
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