ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ
「最悪っ…」


去年の誕生日に買ってもらったばかりだったのに…。


慣れない土地に、3年間も住むことになって。

しかも、引っ越して早々イヤホンケースは失くすし…。


…ほんと、もうやだ。



だから、このときのわたしは思ってもみなかった。


わたしの人生にとって、かけがえのない大切な人と――。

このとき、すでに出会っていただなんて。



「莉子、よく似合ってるじゃない!」


今日から入学する中学の新しい制服を着たわたしに、お母さんが朝ごはんを作りながらそう言ってくれた。


上は、紺色の襟に、胸元に赤いスカーフを巻いた白のセーラー服だ。

下は、襟と同じ紺色のスカート、そして白のソックス。


私が通うことになる中学は、『市立青城(あおしろ)中学校』。

引っ越し当日にお母さんが言っていたけど、家から歩いて15分ほどのところにある。
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