ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ
ベンチに下がった俺のところへ、すぐさま莉子が駆け寄る。


俺は、小刻みに震える手に目を向けながら、嘲るように微笑んだ。


「腕が痺れて……。…言うこと聞かへんねんっ」


この痙攣さえなければ、俺は最後まで投げ続けられたはずなのにっ…。


「…大変じゃない!軽い熱中症なのかもっ…。早くこれを飲んで!」


そう言って、莉子から差し出されたスポーツドリンクを飲めるだけ飲む。


…体調には人一倍気をつけていたはずだったのに。

こんなときに、熱中症かよ…。


あとは、チームの仲間に任せるしかない自分の無力さに、無性に目の奥が熱くなった。


「…クソッ。こんな大事なときに、俺は足手まといかよっ…」


キャップを深く被り、悔しさで唇を噛みしめた。


そんな俺の隣に、優しく寄り添う莉子。
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