ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ
「もちろんです」


俺は、キャップを被り直して立ち上がった。


「…待って、大河!大丈夫なの!?」


そんな俺を見て、慌てて莉子が声をかける。


「ああ。もうすっかりよくなったし」


莉子が、俺のことを心配してくれているのはわかっていた。

だから、これ以上不安な思いをさせたくなくて、俺は気丈に振る舞った。


手の震えが残っていることは、絶対に言わない。



「なんで泣きそうな顔してんねんっ」


まだ負けたってわけでもないのに。


「べつに…、泣いてなんかっ…」

「大丈夫やって!勝つのは俺らやから」


そう言って、俺は莉子の頭をくしゃくしゃに撫でた。


…なんだよ。

いつもはどこか上から目線で、偉そうな莉子のくせに――。


こういうときに限って、かわいく見えるだろ。
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