ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ
なにもない街だと。


見える風景は、山と田んぼと畑。

それに、ちょこっと家が建っているくらい。


プリクラが撮れそうなゲームセンターもないし、スタバも見当たらない。


そんななにもないところに、わたしは今日、こうして引っ越してきた。



お父さんが運転する車は、徐々にスピードを落としていき、高速道路の下り口へ差しかかる。


…ああ、本当に着いてしまったんだと憂鬱すぎて、さっきからため息しか出ない。



わたしの名前は、桜庭(さくらば)莉子。

この春から、中学1年生になる。


生まれてから12年間住んでいた東京を離れ、お父さんの仕事の都合で、今日こうして関西に越してきた。


わたしはこの日を迎えるのが、とても嫌で嫌で仕方がなかった。


なぜなら、仲のいい友達とは離れることになるし、東京と比べたらなにもない。
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