ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ
「これ、自分のとちゃう?」


大きな手のひらの中にあったのは、丸みを帯びた白いもの。


…これ。

失くしたと思っていた、わたしのワイヤレスイヤホンのケースだ。


「なんで…これ」

「コンビニに落としてたで。たぶん、俺とぶつかったときに」

「…ぶつかった?」


そうつぶやいてすぐに、引っ越し初日のことを思い出した。


そういえば、コンビニのイートインスペースで、カフェオレを飲んでいたとき――。


「あのときの…野球部!?」

「…野球部?…ああ、あのときは野球チームのメンバーでなっ。こいつもそのとき、そこにおったし」


そう言って、隣にいた男の子に目を向ける。


なんとなく見覚えのある顔だと思ったら、あのときわたしがぶつかった野球部――。

じゃなくて、野球チームの男の子だったんだ。
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