ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ
まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔で、担任の先生が俺に目を向ける。


「だから、俺は清鳳(せいほう)大学を受験するつもりです」


清鳳大学は、家から電車で1時間ほどで通える距離にある。

それに、今の俺の偏差値なら、これから真面目に勉強すれば合格できる可能性は高い。


「…そうは言ったって!矢野っ…、お前…野球は!?清鳳大学は、野球には特化してないぞ…!?」

「それは、わかってます」

「わかってるって…。お前の実力なら、プロ入りだってほぼ間違いないだろう!?」

「そうかもしれませんが、俺は清鳳大学に入りたいんですっ」


俺はそう宣言すると、職員室から出ていった。



ここまで野球一筋でやってきて、プロ入りの可能性のある俺が、野球を辞めて普通の大学に受験するという噂は、瞬く間に学校中に広まった。
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