ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ
もちろん監督は説得にきたし、野球部員たちだって「プロを目指さないなんてもったいない」と言いにきた。


しかし、俺はどれだけ説得されようと、清鳳大学への受験をやめるつもりはなかった。


――なぜなら。

清鳳大学は、莉子が志望する大学だったから。



中学3年の秋。


『1人やと感じるなら、俺がずっとそばにおる…!莉子を1人にはさせへん!』

『もしここにいる意味がないと思うなら、…俺のためにここにいてほしいっ』


莉子の両親が亡くなったときに、俺が莉子にかけた言葉。


この言葉に嘘はないし、俺のこの言葉をきっかけに、莉子は関西に残ることを決めて、明光学園を志望してくれた。



そして、高1のあと一歩で甲子園出場を逃したあのときだって――。


『…莉子。もう絶対離れへんから』


すれ違っていた時間を埋めるかのように、俺は莉子を抱きしめた。
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