ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ
試合会場の最寄り駅から電車に乗り、明光学園へと向かった。



大河とは、あの日以来口を利いていない。

それに落ち込んでいて、尚更わたしなんかと話したくないかもしれない。


だから、声をかけるつもりはない。


でも、もし先輩たちの言葉に助けられて、陰から元気そうな大河を見ることができたら――。

それだけで十分だ。



明光学園へ着くと、すでに表には野球部を乗せて帰ってきたバスが停まっていた。

そして、バッグを肩にかけて、帰っていく野球部員の姿も。


とっさにバスの陰に隠れて様子を窺ったけど、どうやら大河の姿はなかった。


――そのとき。


「こんなところで…なにしてるん?」


突然後ろから声がして、驚いて振り返る。

すると、そこにいたのは悠だった。


「…悠!」


悠も、会うのは――あの日以来だった。
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