ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ
「…なんやねん、それ。なんだかんだで言って、大河のこと…めっちゃ好きやん」


そうつぶやいて、悠はわたしの背中をぽんっと押した。


「大河なら、まだ部室にいるはずや」

「…え。でも、さっき帰ったって…」

「莉子を大河のところに行かせたくなくて、嘘ついた」


そうして、微笑む悠。

でも、眉が下がったその表情は…見ていてとても切なかった。


「…これでわかった。お前ら2人の間に、そもそもオレが割って入るような隙間なんかなかったってな」

「悠…」


自嘲する悠に、かける言葉が見つからない。


「悠が、わたしのことを想ってくれているのは…うれしかった。…でも、わたしは大河のことが好きだから。ごめんね…」

「謝んな。謝られたら、こっちが惨めになる」

「ごめ――、…あっ」

「もういいって。それよりも、早く大河のところに行ったら?じゃないと、ほんまに帰ってしまうで?」
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