ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ
「そうだね…!わたし、行ってくるよ。…ありがとう、悠っ」

「ああ。大河に、気持ちぶつけてこい」


わたしは悠に大きくうなずいてみせると、大河がいるという野球部の部室へ向かった。



広いグラウンドの隅にある、各部活の部室の建物。

野球部の部室は、その中でも一番端だ。


駆け足で向かうと、だれかの話し声が聞こえた。

それは、大河の声だった。


よかった、まだ大河がいた。


そう思って、部室の陰から顔を覗かせようとしたら――。


「あたし…、大河のことが好きやねん」


静かなこの場に、突然そんな会話が聞こえてきたものだから、わたしはとっさに首を引っ込めた。


…最悪なことに、告白の現場に居合わせてしまった。


ゆっくりと覗くと、それは3年生のマネージャーの先輩だった。


あの先輩…。
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