ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ
大河の返事も…なんとなくわかってしまった。

きっと大河は、この先輩の告白を――。



「…先輩、すみません」


そのとき、耳を疑うような声が聞こえた。

驚いて、とっさに立ち上がって再度顔を覗かせる。


するとそこには、大河が先輩に向かって頭を下げていた。


「俺、やっぱり今の彼女のことがむちゃくちゃ好きなんですっ。だから、先輩の気持ちには応えられません…!本当にすみません!」


キッパリとそう言ってくれた大河の姿に、思わず胸が熱くなった。


わたしたちの気持ちは、すでに離れてしまっていると思っていたのに――。

実際は、そんなことなかったんだ。



部室の陰に隠れて、潤んだ目を抑えた。


そして、また立ち上がろうとした――そのとき。


「…うわぁ!」


突然、部室の角から現れた大河が変な声を上げた。
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