ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ
ふと聞こえた、昨日のプロ野球の話題。


別れてから3年たった今でも、大河の名前を耳にすると、とっさに反応してしまう。


大河のプロでの活躍は目まぐるしいもので、次々と記録を塗り替え、成果を上げていた。


試合翌日は、メディアで大河が取り上げられない日はない。


『矢野大河』という名前は、今や国民的野球選手として広く知れ渡っていた。


大河が活躍してくれると、わたしもうれしい。

それはもう、大河のいちファンとしての思いと同じだ。


だから、わたしは大河と別れたことに後悔はしていない。


それに、こんなに有名な大河なら、きっとそばにはもう素敵な人がいるはずだ。

わたしみたいに不器用でわがままなんかじゃない、そんな人が――。



わたしは顔を上げた。


大河には負けてられない。
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