ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ
当たり前だが、周りはそんな反応だ。


だけど俺は、このコを知っている。


「もしかして、イヤホンのコとちゃう!?」


そう。

コンビニでぶつかって、ケースを落としていった…イヤホンのコ!


「…あっ、ほんまやん!この間のコやんっ」


隣にいた悠からも、そんな声が漏れた。


悠はあのとき、イートインスペースでこのコの隣に座っていて、俺がぶつかったときも近くで見ていたから。


「俺!俺!…覚えてへん!?」

「…いや。ちょっとよくわからないんですが…」


自分の顔を指でさしてみたが、困った顔をしている。


「…あ、そっか。まぁいいや!それよりも、これずっと返さなあかんって思ってて」


俺は、エナメルバッグのポケットからワイヤレスイヤホンのケースを取り出した。


結局、コンビニにも預けに行けず、でもなにかあったらすぐ出せるようにと、このバッグにしまっていた。
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