ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ
「これ、自分のとちゃう?」

「なんで…これ」

「コンビニに落としてたで。たぶん、俺とぶつかったときに」

「…ぶつかった?」


そうつぶやいて、俺の顔をまじまじと見つめる。


そして、ハッとしたような表情を見せた。

ようやく、思い出したようだ。


「あのときの…野球部!?」

「…野球部?…ああ、あのときは野球チームのメンバーでなっ。こいつもそのとき、そこにおったし」


俺は、隣にいた悠に視線を移す。


あの場には、他に同級生のメンバーが4人いたけど、同じ中学に上がるのは悠だけだ。


「イヤホン充電できひんくて、困ってたんとちゃう?」

「…う、うん。そうなの。ありがとう」

「どういたしまして」


そのコのずっと固かった表情が緩んだ瞬間だった。


その優しい笑みに、不覚にもドキッとしてしまった。
< 37 / 294 >

この作品をシェア

pagetop