ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ
「べつに…、泣いてなんかっ…」

「大丈夫やって!勝つのは俺らやから」


そう言って、大河はわたしの頭をくしゃくしゃに撫でた。


わたしが泣きそうなっているのは、青城中学が負けるかもしれないという心配からじゃない。

もし、ここで無理に登板して、大河になにかあったらという不安からだった。


「莉子は、そこで黙って見てるだけでいいから。…3球で決めてくる」


大河はキャップのつばをギュッ握ると、まるでスポットライトが当たっているかのような、眩しい太陽の光が降り注ぐマウンドへ駆け出していった。



『3球で決めてくる』


大河は、わたしにそう言った。


すると、その宣言どおり――。


1球目、見逃しのストライク。

2球目、空振りのストライク。


…そして、最後の3球目。


大河は、左手に握ったボールに目を移す。
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