冬の月 【短編】
* 3 *
駅ビルには、たくさんのテナントが入っていた。
そのほとんどが若者のファッションを対象にした店だった。
地下には飲食店街があった。
そこにある喫茶店で、僕は彼と初めて会う約束をしていた。
約束の時間よりも少し早くそこに着いた僕が、一人でアイスティを飲みながら携帯で時間を潰し始めて、5分くらい経ったくらいに彼は現れた。
ニット帽を深くかぶり、そのえりあしとサイドから金色の髪を無造作に出している。
背が高くて体格もよく、白のダウンジャケットに履き古したジーンズ…503ってところか、そして黒革のブーツ。
近づいてくるといい匂いがした。
ミュージシャンぽいと言えばそう見えるが…独特のオーラみたいなものが彼にはあり、僕は少し怖いお兄さんというような印象を受けた。
僕を見つけた彼は、テーブルの向いの椅子にさっさと座り、躊躇いもなく口を開いた。
「初めましてじゃないけど、一応初めまして!!俺、春樹(はるき)って言います。
すいません…かなり待たせちゃいました?」
『え?あ…いや、僕も今来たとこなんで…』
「そうなんですか?よかった。えっと、んじゃ…何にしよっかな…」
そう言って彼はメニューを広げて飲み物を選び始めた。