冬の月 【短編】


「あっ…」


パッとひらめいたように、彼は氷を突く手を止めて顔を上げた。


「春人(ハルヒト)にしましょうよ!!」


『え?』


「春樹と人時だから…ほら、コブクロみたいに二人の名前を合わせて!!」


『あ…うん。いいんじゃないかな…』


「よし!!じゃ決まりで!!」


彼はかなり興奮しているようだった。

でも、僕の心の中はそんな彼とは対照的だった。

今更、彼と組むのが嫌だとかそういうことではなかった。

彼は僕にない物をたくさん持ってるし、実力もある。

そんな彼と組むことは、これからも音楽を続けていく僕にとって明らかにプラスなことなのだ。

ただ何かが違うような気がした。

今からやろうとしていることは、僕が今までやってきたことと、これからやっていきたいこと…そのどちらとも違うような気がしたのだ。




「人時さん、俺、今から路上で唄うんですけど聴きにきます?」


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