冬の月 【短編】
『聴かせてあげるよ…「冬の月」。
あの時、ラララで唄ったこの曲に栞ちゃんが詞を書いてくれたんだ。
彼女の…
彼女なりの…
精一杯の気持ちと思いが詰まった…いい詞なんだ。
僕にとっては…奇跡の言葉達だよ。』
僕は満月にそう話して、それからゆっくりと目を閉じた。
一度大きく息を吸い込んで、イントロのDのコードを優しく奏でる。
静まり返ったこの場所にギターの音色だけが響き渡り、僕は「冬の月」を開いた目に映った満月を見ながら唄った。
あの満月に届くように…精一杯の声で唄った。
そしてこの唄が栞に届いた時、僕は誓おう。
もう二度と…君の手の平に一粒の雪も落ちないことを…。