愛され相馬くんの話
杉本陸が捕まって数日がたち
今日が始めてのカウンセリングの日。 


カウンセラーはこういう事件に詳しいベテランで
陸は全てを話すだろうと誰もが思っていた。







「こんにちは、陸くん。僕は君の担当のカウンセラーだよ。……まずは君の名前から教えてくれないかな?」


優しく、解すように問いかける
ベテランカウンセラー。 


やはり……相馬とは違い経験の差を感じるものだ。 



だが彼はそんなカウンセラーの言葉に目も向けず
ポツリと一言呟いた。


「……オレが望んでいるのはお前じゃない。安達相馬を出せ」


イライラしながら
椅子に踏ん反り返り
カウンセラーを睨みつける。


「え……安達相馬くん?……ああ、あの新米カウンセラーだね」


なんで君が相馬くんを知ってるのかな?
と問いかけるカウンセラーに
陸はガンッと拳を机に叩きつけた。


「うるさい、無駄口を叩くな。オレは《相馬さん》を呼べといった。《相馬さん》とのカウンセリング以外、受けるつもりはない」


そう言ってカウンセラーに威圧をかける。


「……でもね、陸くん。……相馬くんは新米でまだカウンセラーの成り立てなんだよ。……だから、まだ彼にカウンセリングは早いと思っているんだ」


それを聞いた彼は
ガシガシと腕をかきむしる。


「黙れ。貴様と会話する気はない。……どうしても、相馬さんをオレの担当カウンセラーにしないというのであれば、ここで舌を切って死ぬ」


ガシガシと勢いよくかきむしった腕には
血が流れでて
机を真っ赤に染めていく。 


陸は無表情で腕をかきむしるのを止め
側に置いてあったハサミを手に持つ。


「オレの担当カウンセラーは安達……相馬だ」


そう言い捨てると
口を開け、舌を出す。 


そしてハサミを徐々に舌に近付けていく。


「や、止めなさい……!」


慌てて止めに入ったが
彼はそのカウンセラーを殴り飛ばし
馬乗りになった。


「相馬さんを呼べ。相馬さんを俺の担当カウンセラーにしろ。相馬さんを呼べ。相馬さんを俺の担当カウンセラーにしろ。相馬さんを呼べ。相馬さんを俺の担当カウンセラーにしろ。相馬さんを呼べ。相馬さんを俺の担当カウンセラーにしろ」


呪文のように言いながら
カウンセラーを何度も殴り付けた。 




……その一件を気に会議で相談をした結果
満場一致で陸の担当カウンセラーは
相馬に決定することに……。
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