愛され相馬くんの話
「……というわけなんだ」


相馬の全身にはブルッと鳥肌が立つ。


「お前……辛かっただろう、怖かっただろう……?もう無理はしなくていい。お前には早すぎたんだ」


慎也は彼の手を包むように握り
陸によって爪をたてられた切り傷を
哀れんで見つめる。




相馬はその彼の言葉に
心底甘えたかった。 


正直な話
もう陸の顔すら見たくはない。


(俺がここで止めるのは簡単だ……。けど、そんなんでは何も解決しない。それに助けを求めるようなあの表情……)


頭に過った考えを吹き飛ばし、慎也を見据えた。


「俺に……陸のカウンセリングを任せて下さい。逃げません。真実からも……杉本陸からも……!」


ギュッと強く彼の手を握り返す。 


慎也はそんな力強い彼の顔をみて
薄ら笑みを浮かべた。


「さすが、俺が見込んだ男だ!」


そう言うと相馬から手を離し
ガシガシと強引に頭を撫でる。


「俺は……陸を救います!」








〜登場人物〜
○佐藤慎也(41)
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