カレンダーガール
向かったのは、隣町のウイークリーマンション。
1階の角部屋。
チャイムを押すと、啓介が出てきた。

「ど、どうしたの?」
無精ひげに、ボサボサ頭。
強いアルコール臭。

部屋の中に入ると、空き瓶、空き缶が転がっていた。
啓介は倒れるように、ソファーに沈み込む。

「何してるの!」
その虚ろな目を見て、アルコールだけではないと確信した。

とりあえず部屋に入り、ゴミ袋にゴミを集め、カーテンを開け、窓を開ける。
ワンルームの狭い部屋だけに、10分もあれば座るスペースが確保できた。

「どうしたの?」
なるべく刺激しないように、出来るだけ優しく声をかける。

「寝れなくて、でも仕事が忙しくて」
「うん」
「最初は疲労回復に薬を出してもらったんだ」
「それで?」
話の先を促す。

「気がついたら、薬がないと息が苦しくて、知らない人の声が聞こえるようになった。でも、仕事は山積みで・・・」
苦しそうな表情。

本当なら、「それは研修医ならみんな一緒だよ」と言いたい。
あなた1人じゃないんだから甘えないでよ檄を飛ばしたい。
でも、今の啓介にはできない。

< 108 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop