カレンダーガール
3月初め。
消化器科部長が家に来た。
あと1ヶ月で自宅静養の終わる私に、春からどうする気かを確認に来たようだ。

「選択肢は、このままうちの病院に残るか、違う研修先に移るか。どちらにしても楽ではないと思う」
部長らしい、あっさりした口調。

「2週間くらいで答えを出してください。ちなみに、消化器科ではもう受け入れられそうにないの」
「えっ?」
思わず声が出てしまった。

「森先生が、来年度もうちに残ることになったから。さすがに、あなたと一緒にって訳にはいかないでしょ?」
え?
「留学は?」
つい、聞いてしまった。
「知ってたのね?森先生の留学は学長の推薦だったから、断わるには森先生のお父様が頭を下げにいらしたと聞いたわ」
「そんな・・・」
知らないところで、色んな人に迷惑をかけていたんだ。

「今回のことは、基本的にはあなたが悪いわけではない。でも、あなたも森先生も多くのものを失った気がする。あなたの真っ直ぐな性格は大好きだけど、こうならない方法もあったんじゃないかと反省してみる必要があると思うわ」
穏やかだけど厳しい言葉。
私には何も返す言葉が見つからなかった。


その後、部長と入れ替わりには紗花もやってきた。

「明日鷹先生の事聞いた?」
心配そうな顔。
「うん。うちの病院に残るって。先生のお父様まで巻き込んでしまったと聞いた」
「それだけじゃない。森先生自身も、部長や学長に頭を下げて廻ったって」
「そんな・・・」
すべては、私のせいなのに。そう思うと、涙があふれた。
本当に私は最近よく泣いている。
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