カレンダーガール
「お父さんですか?」
剛先生の問いに、
「はい」
ひどく緊張した面持ち。

「まだ検査の途中ですが、お子さんは内臓に疾患があると思われます。場合によっては手術になります。どちらにしてもここ一両日は直ぐに連絡が取れるようにしておいてください」

早口で用件を伝える剛先生と、心配そうに赤ちゃんを見つめるお父さん。
その眼差しが切なくていたたまれない気持ちになりかけたとき、お父さんが意外なことを口にした。

「先生、もし手術が必要になってもしないでください」
「はあ?」
私は驚いてお父さんを見る。
「それは、どういうことでしょう?」
あくまでも淡々と、剛先生が問う。

「私には、寝たきりの兄がいるんです。生まれたときから寝たきりで・・・みんな苦しんできました」
「この子は違いますよ。ちゃんと生きられます」
「分かっています。でも、自然に逆らいたくないんです。手術しないと生きられない体で生まれたなら、それが運命だと思うんです。手術には同意しません」
お父さんは、真っ直ぐにこちらを見てハッキリと言った。
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