カレンダーガール
5月の連休明け。
研修医達も日々成長し、病棟や救急での当直勤務に就くようになった。

そんな彼らの姿に、どうしても去年の自分を重ねてしまう。
まだまだ私も彼ら側の人間だけれど・・・
失敗しないかな?
大丈夫かな?
なんて気持ちで、研修医たちを見つめていた。
そんなある日、

「果歩先生、お願いします」
「・・・」

ん?
NICUで作業する私に聞こえてきた果歩ちゃんを呼ぶ声。けれど、返事が聞こえない。
気になった私は、声をかけた看護師に近づいてみた。

「どうしたの?」
「いえ・・・別に・・・」
言いにくそうに言葉を濁す。

「すみませんが、桜子先生。点滴の指示出していただけますか?」
側にいた別の看護師が私に依頼した。

それはいいけれど・・・

「果歩ちゃん」
「はい」
私が呼ぶと、果歩ちゃんが寄ってきた。

「点滴の指示出してあげて」
「・・・はい」
不満そうに、それでもカルテに向かい指示を出している。

ここ数日、果歩ちゃんは当直や残業が続いているし、きっと疲れも溜まっているんだろうと思う。
でも、だからと言って、無視するなんて褒められた態度じゃない。

「果歩ちゃん。スタッフはみんな仲間だからね」

先輩としてやんわりと注意した、つもりだった
しかし、指示出し終え私を見上げる果歩ちゃんの顔が、とっても意地悪い。

「先輩には関係ないですよね?」
「え?」

その日から、果歩ちゃんが別人のように変わった。
剛先生の前では1オクターブ高音になるくせに、私や看護師しかいないと分かると、不機嫌丸出し。
その上、仕事は器用にそつなくこなす。
手強い研修医が本性を現した。
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