カレンダーガール
「鈴木先生。こっちはいいから、検査指示とカルテの記載を片付けて」
救命部長がいない今、救急外来を統括する川上先生が声をかける。
動揺している私に、診察から外れ雑務をしろということらしい。
とにかく今は自分の出来ること、カルテの記載と検査のオーダーなど依頼のあった雑務をこなすしかない。
でも、カンファレンス室が気になって・・・

「待ってください」
その時、奥のベットから看護師さんの緊張した声が響いた。

えっ?
何人かの医師が、集まっている。

ええっ?
みんなが、私を見ている。

「鈴木先生、来てくれる?」
川上先生に呼ばれ、処置室の隅にある作業スペースへ。

向かい合う形で椅子に座り、目の前の端末でカルテが開かれた。

「先生、この指示出した?」
示されたのは、少し前に来た女性のカルテ。

確か、輸血の指示を・・・
「出しました」
「血液型、確認した?」

えっ?間違えた?

「す、すみません」
もう、そんな言葉しか出て来ない。

「こういう間違いを防ぐために僕たち上級医や多くのスタッフがいるんだから大丈夫だよ。それに、先生は今日が初めてだったし、色々あったからね。もういいから、今日は上がりなさい。」
川上先生の言葉はあくまでも優しい。
でも悔しくて、本当に情けない。
結局川上先生に促され、私は勤務途中で医局へ戻ることとなった。
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