カレンダーガール
「桜子っ」
その時、玄関から今一番聞きたくない人の声がした。

ああー。
顔を上げると、明日鷹先生の表情が固まっている。

私は、恐る恐る後ろを振り返った。

「大地」

そこにいたのは、いかにも高そうなスースに身を包み冷たい目でこちらを見ている、ビジネスマンと言うよりヤクザ風な男。
この人は、私の実の兄。

「桜子?」

明日鷹先生が、この状況の説明を求めている。

「兄、です。大地って言います」
「お兄さん・・・」
驚いているのがよく分かる。

突然の兄登場に私も明日鷹先生も驚きで動けなくなっていると、大地の方が近づいてきた。

そして、
「連絡もなく朝帰りか?」
凄みを効かせた声で言う。

「なんで、こんな時間に大地がいるの?」
「当直でもないお前が帰ってこない。携帯に出ないって母さんから連絡があったんだよ」
見ると、母さんが玄関先まで出てきている。

「とにかく、中に入ろう」
明日鷹先生の冷静な一言で、私たちは家の中に入ることとなった。
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