カレンダーガール
「明日鷹さん。何で、桜子なんですか?」
唐突に、大地が聞いてきた。

即答できずにいると、
「桜子と明日鷹さんでは、住む世界が違いませんか?思い描く未来が違うんじゃありませんか?昨年のこともあり、明日鷹さんには感謝しているんです。でも、桜子の将来を託すとなると話は別です」

押しつけるわけでもなく、泣きつくわけでもなく、あくまで淡々と話す大地。
普段から、交渉や駆け引きに慣れているのが分かる。

「若いくせに、親父と同じ事を言うんだね。本当に年下?」
ため息交じりに大地を見てしまった俺に、
「少なくとも、明日鷹さんよりは苦労してきていると思いますよ」
大地は苦笑気味に口元を緩めた後、手にしていたグラスを一気に空けた。

「俺の仕事は、ある意味裏の仕事です。だから、妹2人が医学部に受かったときはうれしかった。本当に、自分のことのように喜んだんです」
そこまで言うと、大地は顔を上げて俺のことを真っ直ぐ見た。
「明日鷹さん、俺はこれ以上の高望みはしません。妹達には、医者として平凡に生きて欲しいんです。苦労はさせたくない。正直、桜子とは別れて欲しいんです」
「大地・・・」
5歳も年下の彼の言葉に、俺は何も言い返すことができなかった。
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