カレンダーガール
急に立ち上がる明日鷹先生。
「何か食べに行こう」
いつものように誘ってくれるけれど、
「食欲がありません」
私は一人になりたい。

「でも、おなか鳴ってたよ」
もーっ。

「今は何も欲しくないんです。このまま家に帰りますから」
正直、今は明日鷹先生といるのもつらい。

「そんな顔して帰ったら、お母さんが心配するんじゃない?」
「え、もしかして・・・初対面じゃないって、気づいてました?」
「うん。見覚えがあったし、ママに似ているしね」
「そうですか」
てっきり気づかれていないと思っていた。

「君がいないときにも、何度か店に行っていたんだよ」

へー、そうだったんだ。

チラチラと何か言いげに明日鷹先生がこちらを見ている。

「何ですか?」
「いや、ママからは『娘をよろしく頼みます』って言われていたんだけれど、君は隠したいみたいだったから」
「別に、隠していたつもりはないんです。ただ、大学時代から周りはいいとこの家の子が多くて、母子家庭で母親が水商売って言い出しにくかったんです」
「そんなこと言うものじゃない。立派なお母さんじゃないか」
「・・・すみません」
なぜだろう、今までこんな話しを誰にもしたことないのに。
やっぱり今日の私は相当弱っているらしい。

「ご馳走するから、何か食べに行こう」
明日鷹先生に腕を引かれ、勢いで私も立ち上がってしまった。
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