カレンダーガール
これで何人目だろう。

「桜子先生。津田舞ちゃん、マイナスでした。」
「そう。良かった。次ぎに呼ぶから」
診察をして、検査をして、結果を説明。
終わりが見えない作業に感じる。

「津田舞ちゃんですね」
「はい」
舞ちゃんは5歳の女の子。
お母さんにだっこされ、真っ赤な顔。

「熱は38.5度と高めですが、検査は陰性でした。風邪の薬と解熱の頓服を出しますので、様子を見てください。もし、水分の摂取が難しくなるようなことがあれば時間外でもかまいませんので、救急外来を受診してください」
「はい。ありがとうございました」
お母さんは納得した様子で頭を下げ、診察室を後にする。

そして、私は次の患者を呼ぶ。
医者にとっては日常の業務。
でも、気をつけなくては・・・
症状を言ってくれない子供だからこそ、大きな病気を見逃す可能性がある。
剛先生の小さな事にまで妥協しない姿勢もここに理由があると思う。
そして、小児科医に人気がないのも物言わぬ患者故に誤診のリスクが高いこと、保護者との確執が生まれやすいことが原因。
実際昨日も・・・
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