カレンダーガール
無断欠勤から半月ほど過ぎたころ、私は果歩先生のマンションを訪ねた。
たぶん、会ってはくれないだろうとは思いながら、それでも黙ってはいられなかった。
今何とかしなくては、病院に戻ってこれなくなるかもしれない。
そう思ったら、憎たらしく思う気持ちは消えていた。

ピンポーン
「・・・」
マンションの入口でチャイムを鳴らしても、やはり返事はない。

ピンポーン
ピンポーン
それでも鳴らし続けると、

「はい」
不機嫌そうな返事が返ってきた。

「あの・・・鈴木ですけど・・・」
「分かってます。見えてますから。どうぞ」

エントランスのドアが開き、私はマンションの中に通された。


エレベーターで高層階まで行き、部屋の前でチャイムを鳴らす。
出てきたのは、ゲッソリとやつれた別人のような果歩先生。

「中に、入りますか?」
どこか挑戦的な言葉。

「いや、ここでいいわ」
言いたいことだけ言ったら帰るから。

「何の用ですか?」
すっぴんで部屋着のまま、ドアに手をかけて私を睨んでいる果歩先生。

「あなた、薬物依存でしょう?」
ここまで来たからには遠慮するつもりもなく、はっきりと口にした。
「は?何のことですか?」
否定しながらも、果歩先生の目が泳いでる。

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