カレンダーガール
その後、明日鷹先生がうどんを作ってくれて2人で食べた。
臭いが少なくて食べやすいうどんが、今の私の主食になっている。

「桜子、それだけしか食べないの?」
頑張って半人前を食べた私に突っ込みが入る。
「つわり中の妊婦なんてこんなもんです」
ぶっきらぼうに言い返す私。

でも、心配性の明日鷹先生のおかげでちょっと考えさせられた。
今までつわりのつらさに負けて、親としてとか子供のためにとか考える余裕がなかった。
実際、明日鷹先生の言うことが世間の常識なのかもしれないし、今の私には親になる自覚も覚悟も足りないのかもしれない。

「桜子、どうした?」
急に黙り込んだ私の顔をのぞき込む明日鷹先生。

「何でもありません。ただ、病院の受診も勤務のこともちゃんと考えたいので、もう少し待ってください」
「どうして?何を待つの?」
不思議そうな表情で、じっと私を見てる。

正直、自分でもどうしたらいいか分からないから。
赤ちゃんのことを最優先に考えなくちゃいけないんだろうけれど、いい加減な気持ちでできる仕事でもないし、明日鷹先生の負担になるのだけは嫌だ。そんなことを思っていたら、やはり答えは出ない。

「色々と考えてみたいんです。すみませんが、もう少しだけ時間をください」
私は明日鷹先生にお願いした。

「分かった。桜子が納得いくまで考えて結論を出したらいいよ。でも、その結論に俺が納得するかどうかは別だ。父親としての意見は言わせてもらうから」

『父親として』その言葉が、私の頭の中で何度もこだました。
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