カレンダーガール
買い物を済ませ店を出た私たちは、車で1時間ほどかけて郊外の温泉へ向かった。
緑深い山の中。
小さな温泉宿がいくつか建つだけの小さな温泉街の一角にある日帰り温泉施設。
券売機で入浴券を購入し中に入るとお客さんは少なめで、サウナで日頃たまった物を汗に流し、露天風呂で気持ちもリフレッシュすることができた。

「うーん。生き返るー」
両手を突き上げて青空のもとで伸びをすると、新鮮な空気が全身を巡る。

「そう言えば、寛子先輩が結婚するらしいよ」
ジャグジーに浸かりながら、紗花が言う。

「へー」

寛子先輩は大学の1年先輩で、研修医2年目の26歳。
世間的には結婚適齢期ではあるけれど、今の私には結婚なんて想像もできない。

「紗花はどうなの?」
「どうって、結婚?」
「うん」
「結婚なんて無意味よ。結婚したって相手のために時間を奪われるだけで、私たちには何のメリットもないでしょ?」
紗花らしい意見。

「紗花なら、自分を曲げず妥協もせずに結婚生活送りそうだものね」
「はー、それって褒めてないよね」
不満そうな顔。
「いやいや、褒めてる褒めてる」

ピチャッ。
紗花が私にお湯をかけた。

「ちょっと、やめなさいよ!」

私もかけ返して子供みたいにはしゃぎ、廻りのおばあさん達の冷たい視線を受けながらも私たちは笑いあった。
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