カレンダーガール
その日の夜。
午前1時過ぎ。

ブブ ブブブ
スマホの着信。

「もしもし」
『桜子?遅くなってごめんね。今、君の家の前だけど、少し出て来れる?』
「今まで仕事だったの?」
まずはそのことにびっくりした。

いくら忙しくても、当直でもないのにこんな時間まで・・・
『残務処理がたまっていてね。こんな時間で悪いけど、どうしても話したいんだ』
「わかったわ」
私は素直に応じ、彼の元に向かった。

そして車に乗り込んで、彼の顔を見た私は驚いた。

「ひどい顔。ちゃんと寝てる?」
そっと頬に手を当てる。
「バタバタしていてね。でも、桜子も寝てないんじゃないの?」
「え?」
「君が寝不足で顔色が悪そうだって、剛が連絡してきたぞ」
ああ。クマができていたから。

「私のことは何でも筒抜けなのね?」
少し嫌みっぽく言ってみる。
「当たり前だろ。目を離すと何をするか分からないからね」
悪びれるそぶりも見せず認める明日鷹。

名前を呼びあうようになっても、敬語を辞めても、いつまでも私のことは子供扱い。
それが無性に腹立たしい。

「ねえ、桜子。本当は時間を作ってゆっくり話がしたいんだけど、今はその余裕がないから。ここで言うね」
「うん」
広くはない車の中で、私は姿勢を正して彼の方に向き直った。

一体何を言われるんだろう。
まさか、別れ話とか・・・

明日鷹も私の方を向き、真っ直ぐに視線が合った。
< 237 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop