カレンダーガール
「去年の騒動の時、うちの親と学長が留学の話を持ち出したのは知っているよね?」
「うん」
結局は断わってくれて、病院に残れることになったはず。

「その時、留学を断わる代わりに見合い話が来たんだ」
見合いの話があるは知っていたけれど、
「それは、お見合いをしたってこと?」
「うん。断れなくてね。1度会った」
へえ。お見合いしたんだー。

「で、その方と結婚するとか?」
つい、意地悪な言い方をしてしまう。
「馬鹿っ」
なぜか、怒られた。

あれ?
この状況で怒られるのは、私なのだろうか?

「何言ってるの。1度だけ会って、見合いは断わったよ。僕には君がいるんだから、他の女性と付き合う気はない。でも、ただ断わるわけにはいかなくてね」
困ったように、明日鷹が目をそらす。
「それで?」
私は話の先を促した。
「見合いも留学も断わって、勤務もそのままって訳にはいかなかったんだ。うちの親やお世話になった先生方も俺の将来のことを考えてのことだしね」
それって、まさか・・・
「それで、アメリカ赴任?」
「ああ」

きっと今、私はすごく悪い顔をしていることだろう。
だって・・・
私はただ、一緒にいたいだけなのに・・・
いつの間にか私は涙を流していた。

「桜子?」
心配そうに声をかける明日鷹。

「そんなに難しいことなの?私はただ一緒にいたいだけ。子供と私たちと3人で近くにいたいと願うことがそんなにいけないこと?」
離ればなれになるなんて・・・ひどすぎる。

妊娠中はホルモンのバランスが崩れるから、精神が不安定になると言う。
今の私がきっとそう。
泣いたり、怒ったり。
本当なら一番疲れて弱っているはずの明日鷹に、怒りをぶつける最低な私。
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