カレンダーガール
郊外の家電店に向かう静かな車内。
真っすぐに前を見て運転する明日鷹先生の隣で、私はなぜか啓介とつきあっていた頃を思い出していた。

啓介の実家は地方の開業医。
立派なマンションに、バイトしないで暮らせるだけの仕送りがあり、車も持っていた。
つきあっていた頃は、私もよく啓介の車に乗せてもらった。
自分の物を置いたり、お気に入りのグッズを揃えたりして楽しんでいた。
さすがにこんな立派な車ではなかったけれど、啓介の運転で色んな所にも連れて行ったもらったなぁ。
流れていく車窓を目で追いながら、私は回想に浸ってしまった。
そう言えば、最近啓介に会ってない。
連絡もよこさないし、やはり忙しいんだろうか? 今度誘ってみよう。
久しぶりに紗花と3人で飲みたいな。

「ねえ」

「はっ、はい」
明日鷹先生の横で啓介を思い出していた自分に罪悪感を感じ、慌てて返事をした。

「病院の外で、先生はやめようよ」

確かに変だ。
じゃあ・・・
「何て呼んだらいいですか?」

森さん?明日鷹さん?

「明日鷹でも、明日鷹さんでもいいよ。僕は・・・桜子ちゃんでいい?」
「はい。私は、明日鷹さんで」
なんか照れるけど・・・
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