カレンダーガール
患者は、6歳の男の子。
すでにベットで横になっていた。

「どうしました?」
川上先生が優しい表情で尋ねる。

「階段から足を滑らせてしまって」
と、母親。

「僕、名前は?」

川上先生に聞かれ、男の子は一瞬母親を見た。

「旭(あさひ)です」
母親が答える。

「どこをぶつけたの?他に痛いところはない?」
それでも根気強く川上先生が症状を聞くと、
「大丈夫」
返ってきたのは、小さな声。

見た感じ、体に傷はない。
階段から落ちたときの内出血と腫れが、背中や足にあるのみ。
でも、何だろうこの違和感。
川上先生が診察をする横で、私はじっとその様子を見ていた。

「とりあえず、レントゲンを撮りましょう」
一通り診察をした後で指示を出す川上先生に、
「あの、もう大丈夫です。落ちたとき一瞬失神してたので連れてきましたが、もう大丈夫です」
なぜか慌てたように、母親が言う。

「気を失っていたのなら、なおさら検査しないといけませんよ。頭部CTも撮りましょう」
パソコンを叩きながら川上先生が検査の準備を進める。

その時、診察室のドアが開き男性が入ってきた。
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