カレンダーガール
あーあ。
またやってしまった。
親子が帰った救急外来で、私はひとり落ち込んだ。

「桜子、カレー冷めるよ」
「うん」

紗花に呼ばれ、私も腰を上げる。

休憩室に入ると、すでに川上先生と数人の看護師さんが夜食中。

「すみませんでした」
私は川上先生の近くまで歩み寄り、深々と頭を下げた。

川上先生はカレーを食べる手を止め、私を見上げる。

「危なっかしくてしょうがないな。気をつけないと大事になるところだったよ。分ってる?」
ちょっと厳しい顔。
「すみません」

自分でもちゃんと分かっている。
川上先生は優しく言ってくれているけれど、かなりマズイ状況だった。

「鈴木先生。今度何かあったら、明日鷹を呼ぶよ」
「えっ?」
脅されているのか、からかわれているのか、意味が分からずポカンとした。

「前のときも飛んで来たんでしょう?きっと、電話したら直ぐ来るよ」
冗談交じりに笑われる。

「止めてください。本当に反省してますから。それに、明日鷹先生は私だけじゃなくてみんなに優しいんです」

たまたま私が受け持ちの研修医だから気にかけてくれるだけ。
明日鷹先生にとって私は部下でしかないのだと思う。

「そんなこと言うなら、電話して聞いてみようか?」
あきれたような表情の川上先生が、ポケットから取り出したPHSを見せる。
「や、止めてください。また叱られます」

ハハハハ。
そこにいたスタッフみんなに笑われてしまった。
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