カレンダーガール
「桜子、携帯が鳴ってるわよ」
厨房で食器を片付ける私を、母さんが呼ぶ。

あれ、紗花からだ。
「もしもし、どうした?」
こんな時間に紗花からの電話なんてめずらしい。

『啓介が姿を消したらしいの。桜子、啓介の行きそうな所に心当たりない?』
珍しく慌てた声。

「何かあったの?」
『詳しいことは分からないけれど、今日当直なのに勤務に来なくて、連絡も取れないらしいの』
それは、確かに変ね。
「分かった。私も探してみるわ」

「どうしたの?」
心配そうな母さん。
先生達も私を見てる。

「啓介がいなくなったらしいわ。私も、探してくるから」

そう言ってコートを手に取り店を出て行こうとした時、明日鷹先生が私の前に立ちふさがった。

「どうする気?」
低くまじめな声。
「心当たりを探してみます」

ん?
先生達が妙な顔している。

「何かあるんですか?」
「うーん・・・」
すごく歯切れの悪い、明日鷹先生の返事。

「桜子ちゃん、ちょっとここに座って」
剛先生が椅子に着くよう言う。

「はい」
私は言われたとおり着席した。

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