その瞳に映すもの
転校先
引っ越し当日、僕はお手伝いさんと共に
母親の弟夫婦と会うことになった。
お手伝いさんには、引っ越しする前に少
しでも良いから会った方が良いと言われて
いたけど、僕は母親の弟に会いたくなかっ
た。きっと、母親の弟は母親の顔と似てい
ると思い、あの2人に会いたくなかった僕に
とって、その面影を感じられる人物になんて
死んでも会いたくなかったからだ。
実際のところ、その弟の顔は、僕の母親
とは似ていなかった。仮にあの人が母親似
だとしたら、その弟は父親似なのだろうと
思われるくらいに、別人の顔をしていた。
ただ、容姿は相変わらず端麗だった。容
姿端麗なのは遺伝なのかな?と僕はそんな
ことを考えながらの弟夫婦との対面を果た
した。ちなみに、その奥様も普通に美人だ
った。
「はじめまして。橘椿くん。僕の名前
は、綾瀬美怜(あやせみれい)です。椿くんに
は、これから橘から綾瀬に変更してもらう
ことになっています。僕の名前が女性らしい
のは、僕が生まれる前まで女の子だと思わ
れていて、僕の両親が女の子の名前しか用
意していなかったからだというのと、男の
子は、既に生まれていて、女の子しか望ま
れていなかったからです。」