その瞳に映すもの

 こんなことを言われてしまった。確かに、

今までの僕だったら誰かの側にずっといる

ことを望まないかもしれない。だけど、僕

はもう今までの僕ではない。良い意味なの

か悪い意味なのかはさておき、僕はもう以前

の僕には戻れない。あんなに、何かに対し

て一生懸命努力することは出来ないし、も

うしたくはない。美玲さん夫婦は、以前の

僕がまだ僕の中に残っていると考えている

のかもしれないが、それは大きな間違い

だ。


 相変わらず、1日に1回は一緒に食事をと

る約束は守ってはいるけど、僕は美玲さん夫

婦に僕のことを理解してもらいたいとは思

っていない。僕はもう、家族なんていらな

い。僕のことは放っておいて欲しいのが本

音だけど、美玲さん夫婦に大迷惑をかけた

いとは思っていない。


 だから、徐々に僕はあの人達と距離を取

っていきたいと思っている。二度と会いた

くないあの2人よりは遥かにマシな人達だと

は思うけど、仲良くなりたいとか、僕のこ

とを知って欲しいとは別にならない人達だ

から、僕にとってどうでも良い存在なのか

もしれない。
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